奥の細道を求めて

仏を求める旅

米粒を選別する

昔『美味しんぼ』というアニメで、海原雄山が料理人ではない召使いの家に食事にいく、という話しがあった。召使いは海原先生に出せるような料理は作れないので、最高のご飯と味噌汁を用意しようとした。そのために取った方法が、米粒の中から最高の米だけを選別し味噌も最高の部分だけを選別する、というものだった。


でもそんなことまでしてどれほどの差が出るのだろうか、そしてそんな差を分かる人が本当にいるのだろうかと思ったものだ。でもその後「水質鑑定士」という仕事があることを知った。水道局で水質管理をしているらしい。その人たちの中の一番優秀な人は、水道水の臭いを嗅ぎ口に含んだだけでその水道水の源流の川を特定できる、というのだ。とてもじゃないけど信じられなかった。でも仕事として実際にやっているんだから間違いないのだろう。本当に、海原雄山のような嗅覚と味覚を持っている人がいたのだ。

もちろん私にはそんな繊細な感覚はない。でも今私はインドで米粒を選別している。インドの米と日本の米は種類が違う。インドの米の主流は長粒種でパサパサしているから日本人の口には合わない。おまけに現地のレストランのカレーは油と香辛料が強すぎて私にはかなりキツく、チベット料理はバリエーションが少ないのですぐに飽きてしまう。なので外食はあまりしなくなって主に自室で日本の家庭料理を作って食べている。その時に問題になるのが米だ(出汁もそうだけどそれはまた他日)。インド米は多くの種類があってキチンと精米されているのも多いけど、ダラムサラにはローカルライスという米も売っていて、日本の米と似て小さく丸く太っている。でもこの米は精米が甘くて籾殻やゴミや傷んだ米粒も混じっている。しかも稀に砂粒が混じっていることもあって下手したら歯が欠けてしまう可能性もある。そこで私は今米粒を選別するようになった。もちろん多くの米粒の中から最高の米だけを選別するという方法ではなく、多くの白い米粒の中から小さな黒いゴミだけを排除する、という方法だ。3分くらいやれば一食分の米を選別することができる。そしてやるとやらないのでは確実に味が変わる。まさか自分がアニメの中のあり得ないような登場人物と同じようなことをすることになるとは思ってもいなかった。

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