奥の細道を求めて

仏を求める旅

タバコをねだったおじさんのその後

あのおじさんは私がよく通る路の片隅でいつも酔っ払って寝ている。たまに目が合うとコンビニに連れて行かれてタバコを一箱ねだられる。でも私はそれが嫌ではない。今日は私がビールを一缶買いおじさんにタバコを一箱奢った。その後でおじさんの所帯道具が置いてある道端に座って私はビールを、おじさんは安くて強いスピリッツを飲み、買ってあげたタバコを二人で喫んだ。ほとんど話しは通じないけど、私はこのおじさんが周りのみんなにどう思われいるのか興味があって、ねだられるままに100バーツを出して、私のビールをもう一缶とおじさんのためにスピリッツをもう一瓶買ってあげた。1時間くらいそこに一緒に座っていると、おじさんはすでに酔っ払っているので路を行く人にだれかれとなく話しかけるが、でもたいていの人は苦笑いを返すだけで相手にはしない。中には毛嫌いしているおばさんもいて、路にツバを吐き捨てて行ってしまった。おじさんはそんな人達をバカだと言う。日本語のバカなのかタイ語で別の意味があるのか分からないけど、たぶん日本語の意味だろう。そして自分もバカでお前もバカだと言う。なかなかに深い。

子どもなんかはこのおじさんが近寄ると泣きだして逃げて行ってしまう。そりゃそうだろう。こんなアル中の中年おじさんを誰もまともには相手にしない。私だって日本だったら相手にしないけど、このおじさんはアル中の中ではタチのいい方だと思う。私が知っていたアル中はぐでんぐでんに酔っ払ってまともに立てもしないのに、しつこく絡んで相手にされないとその場に寝転び、大声で分けのわからない事を喚き散らしていた。ここまで行ってしまったらもう入院させるしかないけど、このおじさんはそこまで呑むカネはないのだろう。歳を聞くとまだ55才だと言っていた。若い頃はそれなりの仕事もしていたと思うけど、酒で身を持ち崩してしまったのかもしれない。なんとなく、尾崎放哉を思い出してしまった。

そのうちどこからかオモチャのようなお守り、タイにはよくあるお釈迦様のお守りを出して来て私の手のひらに乗せた。買えという意味らしい。私が首を横に振ると、またあちこちに行って売り付けて歩いていた。誰も買わないだろうと思っていたが、驚いた事に5分くらいの間にどこかで40バーツで売って来た。もう20バーツあると何か欲しいものが買えるらしい。私に20バーツをねだったが、それは断り、そろそろ潮時かなと思ったので礼を言って立ち去った。

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