奥の細道を求めて

仏を求める旅

ダージリン

朝7時、スィリグリに着くと駅前は広く、色んな方面に行くタクシーが何十台も客待ちをしている。バスステーションは少し遠くて本数も少ないらしいので、乗合ジープを探す。「ダージリン」と一声掛けただけで何人も集まって来る。その内の一人が仲間を掻き分け私のスーツケースを掴むと急いで自分の車まで案内し、後部座席の後ろの荷台にそれを積み込んだ。5人乗りのワゴンで、乗合ジープじゃない。客は私一人。値段を訊くと3,000ルピーとバカ高い。でも言い値で乗ってしまった。なぜだろう。いままでずっと窮屈に押し込められて来たからその反動で、この辺でゆっくり一人、一台のタクシーを占有したかったのかもしれない。私は聖者じゃないので節約ばかりじゃ気が滅入ってしまう。ワゴンは軽快に山道を走る。

その山道。横の線路は世界遺産にもなっている世界初の登山鉄道の軌道で、通称トイ・トレインと呼ばれている。線路の幅は60cmしかない。有名なのでご存知の方も多いだろう。さすが有数の観光地だけあって、道路はしっかり整備されている。運転手は儲けに気を良くしたのか、頼みもしないのに、道々ここは何あそこは何と観光案内までしてくれる。私はいい加減に相づちを打つ。この辺りもチベットの影響が強いらしく、チベット寺院があちこちにある。いくつかの小さな町を抜け、3時間でダージリンに着いた。

ダージリンは標高2134m、とにかく寒い、飛び切り寒い。観光地なので一応ホテルを予約しておいたが、そのホテルがあまり良くなかったので、一晩で切り上げて別のホテルを探した。オフシーズンなので空部屋はいくらでもある。近くに『トランキリティ』というホテルがあった。「平穏、静寂」という意味だ。ガイドブックにも紹介されていて評判良く、一泊1000ルピーなのでなんとか予算内。山の上にあるので登り降りには骨が折れるが、名前が気に入ったのでそこに移った。

この写真で、ここがどれだけ急な坂道だか解ってもらえるだろうか。10m歩いただけで一休みしなければとても息が続かない。でも、ここはいいホテルだ。

部屋に上る階段の途中のドア。

丁度クリスマスだったので、ツリーとお釈迦様が並んでいらっしゃる。

12日振りにシャワーを浴びて洗濯をした。服は土埃の中をずっと着たきりだったので、洗濯した後のお湯は真っ黒になる。それまでは水しか出なかったのだ。でもお湯の量が少なくて、とても温まることは出来きゃしない。湯船に浸かりたい、それよりも日本の温泉に浸かりたい。急いで身体を拭き、服を着込んでベッドに潜り込んでも、1時間は体の震えがおさまらなかった。とことん寒い。こんなに寒いのに、インドには暖房という概念がないらしい。皆んなどうやって過ごしているのだろうか。夜8時過ぎ、ホテルの娘さんが湯たんぽを持って来てくれた。ありがたい。

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