奥の細道を求めて

仏を求める旅

ディマプル

500ルピーのホテルの写真。ここまで来るとインドという感じがする。鉄道が通っているせいだろうか。

駅前の風景。

物乞いもいる。おかしなことに、なんだかホッとしてしまった。まずは列車のチケットを買い直さなくてはいけない。二等座席ではなくシートの決まった寝台席だ。寝台券はリザベーションセンターというところで買うらしい。駅舎とは別棟になっている。行ってみたけど買い方がわからない。時刻表には始発駅と終着駅の表示しか無く、どの列車がどこに止まるのか、ここの駅が何時発で、目的駅が何時着なのかもわからない。

日本のように分厚い時刻表は置いてない。ホテルに戻って受付で聞いてみる。この人も親切で、自分のスマホのアプリを使って乗る列車を調べてくれた。ディマプルを午後4時発、スィリグリは翌朝6時着の列車だ。もし昨日あの列車に乗っていたら、夜中の2時にグワティで降ろされていたことになる。駅は閉まっているだろうから、そのままホームで夜を明かすことになっていたかも知れない。10年前、「インドでは決して野宿をしてはいけない、もししたら身ぐるみ剥がされてしまう」とインド人や日本人の誰からも真剣に言われていたことを思い出した。インド人でさえ夜9時を過ぎたら外に出ないくらいだ。乗っていたらどうなっていたことだろう。

230ルピー、400円弱で予約した列車に乗ってスィリグリに向かう。グワティからさらに倍以上の距離があり、しかも座席指定の寝台券だからやはり安い。S1という車両の25番シート、久しぶりのインドの列車は相変わらず混沌としている。満席でどこもかしこも人だらけ。空いてさえいればどこでも勝手に座るので、空席を探しても見つからない。でも二等車両とは違って荷物を持っていても通路を通る事はできる。席に表示されている番号とチケットの番号を照らし合わせ、それを見せて席を空けてもらう。三段ベッドで寝るまでの間は下の二段が座席になるけど、インドでは一つの寝台に二人寝る事はザラなので、三人掛けの座席に四、五人座っている事もある。私の席は向かい合わせ、三人づつの六人掛けで、そこにはすでに七人の家族連れがいた。両親と息子三人、娘二人。私が加わると八人になってしまう。しかも大量の荷物を持っていて、片側一番上の寝台はその荷物だけで一杯になってしまっている。しかも座席の真ん中には巨大な木箱が置かれていて足の置き場もない。木箱を男側の席に寄せ、私は女側の席に座らせてもらった。これで片側四人づつ。男達は三人腰掛けるのが限界なので誰か一人はいつもどこかに行っている。空いてさえいればどこにでも座る訳だ。

近くの席で遊んでいた5歳くらいの男の子が私の持っている帽子が気になったらしく、それを手にとって被ろうとする。両親は咎めるどころか、かえってそれを手伝って、私に断りもなく男の子に被らせて記念写真を撮っている。良いのか悪いのか、インドでは誰でもすぐに友達になってしまう。一言も喋っていないのに、近くの席に座っただけでもう友達だ。友達の物を借りるのにいちいち了解を取るのは水くさい、ということなのだろうか。でも日本人の私には少し抵抗がある。子どもはともかく、親は一言くらい何か言っても良いんじゃないかと思ってしまうが、まあそのくらいのことはどうでもいい。でもその子が私の帽子をオモチャにしてクチャクチャにしてしまった時にも、何も言わないのには少しムッとした。私は子どもが好きだが、甘やかすのもいい加減にしてもらいたい。

夜7時、七人家族の食事も済んで、そろそろ寝る仕度をする時間だ。ベトナムで寝台列車に乗った時には、就寝時間になると車掌が来てベッドメイキングをし、カーテンを閉めて個室にしてくれたが、人が溢れるインドでそんな事はありえない。みんなそれぞれ勝手に仕度する。座席の背もたれを起こして中段の寝台を作り、荷物の中から毛布を引っ張り出して寝てしまう。娘二人は一つの寝台に、末っ子の男の子は小さいのでどこにでも潜り込むが、大きな息子二人と太ったお母さん、そして私は一人で一つの寝台を占領する。荷物で寝台が一つ塞がっているので、そうなるとお父さんの寝る場所がない。一晩中お父さんは木箱の上に座っていた。人数分だけの座席を確保して、荷物の置き場所を考えていなかったのかもしれない。私にしても、頭の横で一晩中起きて居られるのは気の毒だとは思うが、いつの間にか眠ってしまった。

朝5時、まだ暗いが皆んなそろそろ起き出す頃、私も目を覚ました。もちろんグッスリ寝られやしないが、横になれただけでもありがたい。スマホで位置を確認していると、末っ子が興味を持って「どこまで行くの?」と聞いてきた。「スィリグリだ」と答えると、皆んな嬉しそうな顔をする。多分この家族はもっと先まで行くのだろう。終点はコルカタだ。私が途中で降りればお父さんもゆっくり休むことができるだろう。私にとってもそれは嬉しい。6時半頃、「次がスィリグリだよ」とその子が教えてくれた。1時間遅れの朝7時、スィリグリに着いて駅のホームに降りた。

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