奥の細道を求めて

仏を求める旅

コヒマ2日目の午後

ホテルジャピューはメインロードより少し高いところにある。その途中の坂の写真。

ホテルに戻りチェックアウトを済ませると、

「これからモンへ行かれるのですか」と受付の女性が聞くので、

「もう少し安いホテルに移りたいと思う」と正直に答えた。

「このホテルはいかがでしたか」

「とても素晴らしいんだけど、私には少し高すぎる」今度は半分嘘をついた。彼女の横で上司らしい中年の男性が事務をしながら話しを聞いている。

「タクシーを呼んでもらえるかな」

「坂の途中におりますので」とにこやかに言われてしまった。

たむろしているような奴等と交渉するのが嫌なので頼んだのに、仕方ない。重い荷物を転がしながら坂を下る。最初は一人でいる若い奴に声を掛けてみた。「1000ルピーくらいのホテルを探してるんだけど、知ってるかい」「知らない」と首を横に振る。次は4,5人でたむろしている内の一人が向こうから声を掛けてきた。以下はその会話で、例によって多少の脚色を含む。

「安いホテルを探してるんだって?」

「1000ルピーくらいのね」

「どこから来たんだ」

「日本だよ」

「日本人なら(金持ちなんだから)あそこに泊まりゃいいじゃねえか」と上をアゴでしゃくってみせる。

「俺には高いんだよ。安いホテルはあるのかい」

「へっ!」なんだその、へっ、ていうのは。仲間内で何か言って嫌らしい笑いを笑っている。日本人のクセに、といったような雰囲気だ。私には何も言わないので、頭にきて強い語調で、

「安いホテルはあるのかって聞いてんだよ!」

「・・・にいっぱいあるさ。バスで行きなよ。歩いたって10分くらいさ」

「俺はこの近くで探してんだよ。コヒマにはあそこしかホテルがないって言うのか」

「二つ三つはあるけどな、あそこは少し高いくらいのくらいのもんで、たいして違げゃしねえよ」

「そこまで乗せてけよ」また皆んなで笑っているばかりで、行くとも行かないとも返事をしない。

「じゃ、バスターミナルまでいけよ。モンに行きたいんだ」

「知らねえな。バスで行きなよ」ホントに嫌な奴等だ。インド人だからではないと思う。人間の質の問題だ。坂を下りた。

そこの写真。いつもなら、こんな時にはビールを飲んで考えるのだけど、インドで酒を飲むのは難しい。嫌な気分のまま立ち止まって考えていると、何もかもが嫌になってしまった。出口がない。閉じ込められてしまったような気がする。これ以上先へ進むのは諦めようかとも思う。とりあえず、重い荷物を引きずりながらあてもなくウロウロすることはできないので、またホテルに戻ることにする。さっきの女性がいたので「もう一泊したい」と言ったら、上司が変わって、

「タクシーは行ってくれませんでしたか」と穏やかに言う。

「私にはタクシーの言ってることがさっぱり解らない」

「近くにもっと安いホテルがたくさんありますよ。私が電話してみましょうか」と言ってくれたので、お願いをした。

5分くらいでタクシーが来た。その人が行き先を指示してくれている。コヒマで初めて会ったいい人だ。「100ルピー渡してやってくれ」と言う。走り出すと3分もかからない。ほんの200mくらい。初乗り料金が100ルピーなのだろうか。ずいぶん高いと思うけど。それだけコヒマではタクシーが大きな顔をしているということだろう。

着いたホテルの入り口の写真。崖に沿って建てられているので、ここから下に降りる。外は客室の窓になっているので、昼間でも照明が無ければ真っ暗だ。チェックインすると1500ルピー、2550円、これでも私には高い。ホテル代は1000ルピー、1700円以下に抑えたいところだが、やはり仕方ない。そしてここには始めからお湯も無ければWi-Fiもないと言う。かえって潔いいかもしれない。でもインドの普通のホテルなら、こんなところは300ルピー以下だけど。この時にはもうモンに行く気は無くなっていたので、ダージリンへの行き方を訊いてみると、ここからタクシーかバスでディマプルまで行き、そこから列車でスィリグリに行ってから、バスかジープでダージリンへ行けばいいらしい。あんなタクシーに乗るのは金輪際イヤなので、タクシーは始めから除外してバスの場所を訊いてみたのだけど、やはりここでもさっぱり要領を得ない。いったいどうなっているのだろうか。不安は抜けず、嫌な気分は残ったままだ。部屋に入って一人で暫く考えたが、何も結果は出やしない。気が滅入るばかり。そういえば、昼も晩も何も食っていない事に気がついた。でもとても飯を食う気分にはなれないので、そのまま寝てしまった。

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