奥の細道を求めて

仏を求める旅

コヒマまでの道のり

実は私は今、ダージリンにいる。今までWi-Fiも繋がらないような片田舎の山奥にいたので、その間に書いたものをまとめてアップする。


インパールを10:30発予定のバスに乗ったのだけど、時間になっても客は私を含めて2人しかいない。バスには80人分の座席がある。結局12:00になって、客が8人になったところで漸く出発した。時間で走るバスでも客待ちするのか、あるいは客の方が時間に遅れて来るのかわからないけど、インド人は時間をあまり気にしないのは知っているので、午後4時到着の予定が遅れてしまうのは仕方ないとまた諦めることにする。町外れで三々五々客を乗せ半分くらい席が埋まった頃、バスはまた山道に入る。あとはみんな山の中、コヒマは山の中の町だ。最初の内こそ道も整備されていたものの、後の大部分はうねりくねったガタガタ道で、バスは揺れに揺れる、まるで急流を下るカヌーのように。

考えてみれば、この辺はインド亜大陸とユーラシア大陸がぶつかっているあたりで、いわばヒマラヤ山脈の尻尾の先みたいなところだ。山ばかりで当然と言えば当然、おそらくこの後も山ばかりだろう。

山の中は日の落ちるのが早い。午後3時くらいからうす暗くなり始め6時近く、辺りが真っ暗になった頃、山の形がわかるくらいの沢山の灯りが見えてきた。

これは翌日撮った写真だけど、この家々にみんな灯りがついていた。

その灯りの端のところにまで来てみると、KOHIMAという文字がある。やっと着いたのかと思ったが、中心部らしい所を通り過ぎてもバスはなかなか止まらない。これだけ大きな町なんだし、私はコヒマまでのチケットを買ってあるんだから止まらないはずはない、たぶんバスターミナルまで行くのだろうと思っていたが、やがて灯りはなくなり再び真っ暗になってしまった。食事休憩でバスが止まったので、さすがにこれはオカシイと思い直し、近くの人に尋ねてみると、コヒマはもうとっくに通り過ぎたよ、との事だ。慌てて運転手にチケットを見せて確認すると、乗客リストと照らし合わせ、他のスタッフを呼び寄せた。そのスタッフは、

「あなたの荷物をここで降ろしてくれ」と言う。運転手がコヒマで私を降ろすのを忘れてしまったのだ。大幅に遅れた上に降ろし忘れるなんて、呆れてものも言えない。バスは出発し、スタッフは荷物をレストランに運び入れてから、

「あなただってもっと早く言わないからいけないんだ」みたいな弁解をした。

「冗談じゃない、こっちは外国人でコヒマがどこでどれくらい広いのかも知らないんだ」と腹立ち紛れに言うと、それ以上は抗議せずに、

「このレストランで飯でも食って待っていてくれ、すぐに迎えを寄越すから」と宥めにかかった。

日本語で書くと自然な会話に聞こえるけど、それは後で整理して考えたからで、その時は相手の英語もよく聞き取れず、こっちの英語も片言なので相手にもうまく伝わらなかっただろう。でもおおよそこんな流れだったことは間違いないと思う。

スタッフはそれきり何処かへ行ってしまった。文句をつけられるのを恐れたのかもしれないが、こっちは腹が立って飯どころじゃない。レストランに茶はないと言うので、外で注文したチャイを飲んで待っていると、レストランの主人が明らかに迷惑そうな顔で見ている事に気がついた。周りの人達も興味深そうにチラチラ見ている。その内の一人が私をレストランの外に手招きし、荷物も持ってくるように促した。おそらくレストランの主人に気を使ったのだろう。そこで立ち話が始まったが、その人もあまり英語が得意ではない。こっちが日本人だという事は伝わったが、それ以上のことはうまく通じない。ホテルがどうのこうのと言っているがよくわからない。そこで売店のおばさんに会話をバトンタッチした。こっちの方が流暢に話すが、やはり何を言っているのかよくわからない。ホテルがジャピューで、とか何とか。こっちが首をひねっていると、やれやれといった顔付きで、あなたは英語が話せないのか、と来たもんだ。そう簡単にサジを投げられてしまっては困る。わからないならわかるように伝えるのがコミュニケーションというものだ。

(これは後で気が付いた事だけど、インドでは首を傾げるのはイエスのサインだ。日本の頷きと同じで、私が相手の言っていることに同意していながらその質問に答えないので、そう言ったのかもしれない)

そんな事をしているうちに車が来た。コヒマまで荷物を運ぶ途中の車らしい。ジープで、こんな道にはこんな車の方が相応しい。その運転手は私の知らない日本のポップス音楽をかけ、ホテルは予約してあるのか、と聞く。1000ルピーくらいのホテルを探している、と言うと、またしてもジャピューが何とかで、よければ俺がホテルまで連れて行く、と言う。1000ルピーと伝えてあるんだから大丈夫だろうと思い、頼む事にした。そんなこんなでやっとコヒマに着いたのが夜8時。着いたそのホテルの名前がジャピューだ。固有名詞を言われて分かるわけがないじゃないか皆さん。値段を聞くと2800ルピー、4760円、昨日泊まったインパールのホテルと同じ値段だ。1000ルピーと言っておいたのにおじさん。しかもこっちの方が明らかに格が落ちる。とは言ってもこの時間から別のホテルを探す気力もなく、泊まることにした。この時点では、次はもっと奥のモンという町まで行く予定だったので、チェックインの際に次の行先を聞かれた時にもそう答えておいた。それなりに建物は立派だが、部屋に入ると、お湯は冷たくない水が出るといった程度で、Wi-Fiはうまく繋がらない。こんなホテルは1日でじゅうぶんで、明日はもっと安いホテルを探すと決めて服も脱がずに寝てしまった。

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