奥の細道を求めて

仏を求める旅

『紅白梅図屏風』




尾形光琳の『紅白梅図屏風』これはこの絵が描かれた当初を再現した模写だ。現在は



銀は酸化して黒ずんでしまうのでこのようになる。

この絵はとてもエロティックだと言って共感してくれる人はいるだろうか。婚礼の際の新郎新婦の背景の屏風として描かれたものらしい。左の梅は老木で曲がりくねり白いので新郎だろう。右は若木の紅梅の新婦だ。その真ん中に黒くうねる川が流れる(私には、河島英五が歌った「黒くて深い川」が連想される)。その黒い川は切り取られた紙の切り絵で貼られている。でも本物を近くで観ると川の切り方は乱暴だ。こんな世界的名画の細部がこんなにいい加減でいいのか、と思ってしまうくらいに。それに対し、銀の波は繊細に描かれている。おそらく黒い台紙の上全体に銀で波を描き、それを川の形に切り取って貼り付けたのだろう。なぜ、光琳の最高傑作であるこの絵にこんな乱雑な技法を使ったのだろうか。私の知る限り、繊細な彼の他の絵ではこんな乱暴な技法は一度も使っていない。

結婚式ではこの銀の波は輝いていたのだろうけど、今では黒く、深くなってしまった。そして背景の金は金粉を膠で溶かした絵具で描かれている、ということが近年の科学分析で明らかになった。普通、このような屏風には純金の金箔を貼るものなのだけど、そしてそっちの方が簡単で、スポンサーは金持ちなのだから幾らでも金をかけれただろうに、なぜ光琳はそんな面倒な、しかも現代の科学分析でしか解らないような苦労をしたのだろうか。金箔の四角い継目まで、見た目ではまったくわからないまで描き込んでいる。金箔と金泥の差額をチョロまかそうとしたとしたのだは思えない。そして時間が経つと黒くなるという銀の特性はもちろん知っていたはずだ。


婚礼の儀式の後、新郎新婦は床入れをする。この絵はそれへの嫉妬だったのではないだろうか。とすれば、光琳はこの新婦に恋をしていたのだ。新郎新婦の初めてのセックスの間に、嫉妬の黒い川を挟んだのだ。

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